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Research
超伝導
超伝導は、電子がCooper対と呼ばれるペアを組んだ状態であり、系全体のCooper対がその波動関数の位相を揃えることで実現する巨視的量子現象といえます。何故電子がペアを組むのかそのメカニズムを解明したり、超伝導が示す諸性質を探求したりと様々な観点で研究が行われていますが、超伝導状態が示す電磁応答が私の主な研究対象です。
- 磁束の量子化と超伝導臨界電流
超伝導体をリング形状に微細加工したとき、超伝導波動関数の位相は波動関数の1価性により量子化を受けます。それに伴い、磁場を印加した際にはリングを貫く磁束が量子化されることが知られています。他方、超伝導電流は位相の空間変化と関わりがあり、「リング形状+磁場+電流」の組み合わせにより様々な量子状態を実現できる可能性があります。我々は最近の実験研究に触発され、超伝導リングへのバイアス電流の効果を調べ、臨界電流が磁場の関数としてリトルパークス振動と呼ばれる量子振動を示すこと、電流によって磁気テクスチャが形成されることなどを明かにしています。
[関連した研究:1, 2 ]
超伝導リング(左)と臨界電流のリトルパークス振動(右)
- 空間反転対称性の破れによる磁気電気効果、超伝導ダイオード効果
異なる2種類の物質の接合面などで実現する界面超伝導状態は、界面という空間反転対称性の破れに起因したRashbaスピン軌道相互作用が重要な役割を果たします。2次元面内に磁場を印加すると、Rashba相互作用により分裂したフェルミ面が互いに逆方向にシフトすることにより、超伝導ギャップ関数の位相が磁場に垂直方向に変調したヘリカル超伝導相が出現することが知られています。超伝導電流は位相自由度と関わっており、ヘリカル相ではRashba相互作用を通じて磁場と電流との相関(磁気電気効果)が生じています。このとき、電流の流れる向きに非相反性が生じたり(超伝導ダイオード効果)、系に不均一性が存在する場合には、超伝導電流の速度差により鳴門の渦潮のように超伝導渦が生じたりと興味深い電磁応答が現れます。
[関連した研究:1, 2, 3 ]
磁場によるフェルミ面のシフト(左)、不均一性によって現れる超伝導渦(中央)、鳴門の渦潮(右)
- FFLO超伝導状態
重い電子系の層状物質CeCoIn5は、2001年に発見されたスピン一重項d波超伝導体です。スピン一重項Cooper対は↑と↓のスピンを持つ子電ペアで構成されるため、磁場を印加するとゼーマン効果によりCooper対は破壊されます(スピンが揃ってしまうので)。通常はゼーマン効果よりもローレンツ力に起因した対破壊効果が支配的ですが、"重い"故に前者が重要となる点がこの物質の興味深いところです。また、低次元系でも同様に前者が支配的となる状況が現れます。このようなゼーマン効果が強く働く場合には、Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov (FFLO) 状態と呼ばれる自発的にストライプ構造を伴う奇妙な超伝導が低温高磁場領域に出現することが知られています。空間的に一様な通常の超伝導状態とは一線を画すFFLO超伝導状態に関わる物性に興味をもっています。
[関連した研究:1, 2 ]
典型的な温度磁場相図(左)とFFLO状態の磁束分布(右)
