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Research
超流動
- エアロジェル中の超流動3He
3Heの超流動状態はp-波スピン三重項Cooper対凝縮状態であり、非従来型超伝導・超流動の典型例として古くから研究が行われてきました。2000年代に入り、エアロジェルと呼ばれるスポンジ状の多孔質媒質をバルク液体の中に入れた実験により、超流動3Heに対する非磁性不純物が調べられるようになりました。異方性を必然的に伴う結晶系とは異なり、液体3Heはその液体性により等方的であるため、温度-圧力相図の大部分は等方的なギャップをもつBW状態(B相)が安定であることが知られています。我々は、不純物を利用して液体3Heに異方性を導入しようというアイデアの下、エアロジェルを一軸的に圧縮、伸張して試料全体に一様な異方性を加えた状況を考え、一軸伸長の場合に新奇超流動相(polar相)が出現するという理論予想を立てました。その後、このpolar相は実験的に確認され、さらにpolar相において半整数量子渦が観測されるなど大きな進展がありました。
[関連した研究:1 ]
エアロジェルの1軸伸長・圧縮(左)と対応する温度-圧力相図(右)
- 制限空間中の超流動3Heにおけるストライプ秩序
バルクの液体3Heでは、A相、B相と呼ばれる2タイプの超流動相しか現れません。では、どのような状況下でバルク中とは異なるCooper対状態が実現するのでしょうか?エアロジェルを通じた異方性の導入が1つの可能性ですが、超流動3Heの制限空間への閉じ込めがもう1つの可能性として挙げられます。我々は、十分細い円筒容器中において、表面散乱によって円筒軸方向に自発的に並進対称性を破ったストライプ構造をもつ超流動状態が実現可能となることを明かにしています。
ストライプ相においては、スピン流が並進対称性が破れる方向に周期的な振る舞いを示し、また準粒子励起に関しては、表面Andreev束縛状態とは異なるストライプ構造に起因した別の束縛状態の出現など、その特徴を反映した性質が現れます。
[関連した研究:1, 2 ]